LRTの運営は第三セクター、設備維持は自治体――公設型上下分離の仕組み

農村地帯を走るLRT 稲敷再起動

龍ケ崎市駅から入地、たつのこやま、稲敷市角崎、長豊橋を経て成田国際空港へ向かうLRT構想では、誰が列車を運行し、誰が線路や車両を維持するのでしょうか。

この計画に適しているのは、行政が設備を保有し、第三セクターが列車を運行する「公設型上下分離方式」です。

簡単に表すと、次のような仕組みです。

線路・橋梁・停留場・車両は自治体側が保有し、第三セクターが借りて運行する。

ただし、「運営は第三セクター、設備の修理は自治体職員」という意味ではありません。設備の所有責任と費用負担を自治体側が持ち、実際の点検・整備作業は第三セクターや専門業者が行う形が現実的です。

なぜ第三セクター方式なのか

約37kmに及ぶ広域LRTを、龍ケ崎市や関東鉄道だけで運営するのは困難です。

路線は茨城県と千葉県にまたがり、龍ケ崎市、稲敷市、河内町、成田市、成田国際空港など、複数の地域と施設に関係します。

そこで、関係自治体、鉄道会社、空港会社などが共同出資する第三セクターを設立します。

仮に「茨城・成田空港LRT株式会社」とすると、出資者は次のような構成が考えられます。

  • 関東鉄道
  • 茨城県
  • 千葉県
  • 龍ケ崎市
  • 稲敷市
  • 河内町
  • 成田市
  • 成田国際空港株式会社(NAA)
  • 沿線企業・金融機関

鉄道運行の経験を持つ関東鉄道が実務の中心となり、自治体とNAAが資本面・政策面で支える形です。

第三セクターが担当する仕事

第三セクターは、利用者に直接提供する運行サービスを担当します。

具体的には次の業務です。

  • 列車の運行
  • 運転士・指令員の雇用
  • 運行ダイヤの作成
  • 運賃の収受
  • 利用者案内
  • ICカードシステムの運用
  • 車両の日常点検
  • 線路・電力設備の巡回
  • 停留場の清掃
  • 軽微な補修
  • 広告・テナント事業
  • 異常時の一次対応

運賃、広告、ネーミングライツなどの収入は、原則として第三セクターに入ります。

第三セクターは、その収入から運転士等の人件費、電力費、日常的な車両整備費などを支払います。

設備は自治体側の広域機構が保有する

線路や橋梁を市町ごとに分割して保有すると、市町境や県境で管理責任が複雑になります。

そこで、沿線自治体による共同の施設保有主体を設けます。

名称は、仮に「龍ケ崎・成田広域LRT施設機構」とします。

施設機構が保有する設備は次のとおりです。

  • 線路・軌道
  • 入地駅の分岐設備
  • 長豊橋のLRT部分
  • 停留場
  • 架線・変電設備
  • 信号・通信設備
  • 運行管理設備
  • 車両基地
  • LRT車両
  • IC・案内設備

施設機構には、茨城県、千葉県、龍ケ崎市、稲敷市、河内町、成田市などが参加します。NAAが空港区間の施設保有に参加する形も検討できます。

第三セクターは、施設機構から設備と車両を借りて運行します。

自治体が直接修理するわけではない

「設備維持は自治体」と聞くと、市役所の職員が線路を点検したり、車両を修理したりするように思えるかもしれません。

実際には、自治体側は所有者として最終責任と費用を負担し、専門的な作業は第三セクターや鉄道保守会社へ委託します。

日常的な保守と大規模更新は、次のように分けます。

業務主な担当
毎日の線路巡回第三セクター
車両の日常点検第三セクター
清掃・除草・軽微な補修第三セクター
故障時の一次対応第三セクター
レール・分岐器の大規模交換施設機構
架線・変電設備の更新施設機構
信号・通信システムの更新施設機構
橋梁の大規模修繕施設機構
車両の大規模改修・更新施設機構
災害復旧国・県・自治体・施設機構

つまり、正確には次のような分担です。

日常点検と軽微な補修は第三セクター、大規模修繕と設備更新は自治体側の施設機構が担当する。

年間25億円の経費をどう分けるか

この構想では、標準ケースの年間運行・維持経費を約25億円と試算しています。

上下分離方式では、次のように分けられます。

費用区分年額
第三セクターの運行費約19.5億円
施設の日常的な維持費約2.0億円
大規模更新のための積立約3.5億円
合計約25.0億円

第三セクターの運行費19.5億円には、運転士等の人件費、電力費、車両の日常点検、運行管理、利用者案内などを含みます。

自治体側の5.5億円には、線路・電力・信号設備の維持費と、将来の車両・設備更新に備える積立を含みます。

設備維持費も運賃収入から負担する

自治体が設備を保有するからといって、維持費の全額を税金で負担するわけではありません。

標準ケースでは、1日平均利用者数を1万1,500人、平均乗車単価を670円と仮定しています。

項目年額
運賃収入約28.1億円
広告などの収入約1.4億円
営業収入合計約29.5億円

この収入を次のように配分します。

営業収入の使途年額
第三セクターの運行費19.5億円
施設機構への施設使用料5.5億円
予備費・会社利益4.5億円
合計29.5億円

第三セクターが施設機構へ年間5.5億円の使用料を支払い、施設機構はそれを設備維持と更新積立に充てます。

標準以上の利用者がいれば、設備を自治体側が保有していても、通常の維持費を運賃収入から回収できる可能性があります。

利用者が少なかった場合はどうなるか

問題は、利用者が予測を下回った場合です。

低位ケースでは、1日利用者数を7,000人、年間営業収入を約16.6億円と想定しています。

この収入では、第三セクターの運行費19.5億円にも届きません。施設使用料を支払う余裕がないだけでなく、運行自体に約2.9億円の赤字が発生します。

さらに、施設維持・更新費5.5億円を含めると、公共側を含む全体の不足額は年間約8.4億円です。

需要ケース年間営業収入全体経費年間不足額
低位・7,000人/日約16.6億円約25.0億円約8.4億円
標準・11,500人/日約29.5億円約25.0億円なし
高位・16,000人/日約43.0億円約29.0億円なし

利用者が少ない場合、自治体等による運行支援が必要になります。

赤字を自動的に全額補填してよいのか

第三セクターの赤字を自治体が無条件で全額補填すると、経費削減や利用促進への動機が弱くなる恐れがあります。

そのため、自治体と第三セクターの間で長期運行契約を結び、次の事項を決めておく必要があります。

  • 最低運行本数
  • 始発・終電時刻
  • 定時運行率
  • 車両や停留場の清潔度
  • 利用者満足度
  • 施設使用料の計算方法
  • 赤字補填の上限
  • 経営改善を求める条件
  • 災害・物価高騰時の特例
  • 黒字が出た場合の利益配分

例えば、電力価格の急騰や災害など、運営会社の努力では避けられない費用は公共側が支援します。

一方、過剰な人員配置や不適切な経営による赤字まで自動的に補填しない仕組みが必要です。

建設費と開業後の維持費は別の負担

自治体の負担には、建設時と開業後の二種類があります。

建設時の負担

総事業費1,000億円の基本ケースでは、沿線市町の建設費負担を合計100億円としています。

自治体建設時の負担
龍ケ崎市45億円
稲敷市20億円
河内町5億円
成田市30億円
合計100億円

このほか、国500億円、茨城県180億円、千葉県135億円、NAAや関東鉄道等85億円を想定しています。

開業後の負担

標準以上の需要があれば、施設使用料によって通常の設備維持費を賄えます。

ただし、低需要時の運行支援、災害復旧、想定を超える大規模修繕は、自治体側の追加負担になる可能性があります。

そのため、自治体は建設費だけでなく、開業後30年間の維持・更新費まで確認してから事業化を判断する必要があります。

車両も自治体が保有するのか

車両は第三セクターが保有する方法もありますが、この計画では施設機構が保有する方が適しています。

LRT車両は高額で、近年は1編成当たり数億円規模になります。18編成を導入する場合、第三セクターが購入費を借り入れると、運賃収入から多額の元利返済を行わなければなりません。

施設機構が車両を購入し、第三セクターへ貸し付ければ、運営会社の財務負担を抑えられます。

一方で、運営会社が車両を丁寧に扱う責任が曖昧にならないよう、日常点検、大規模検査、事故時の負担などを契約で明確にします。

公設型上下分離の利点

この方式には、次の利点があります。

  • 第三セクターが1,000億円の建設債務を抱えずに済む
  • 運行経営と設備投資を分けて評価できる
  • 県境を越える設備を一体的に管理できる
  • 国の補助制度を公共側が活用しやすい
  • 災害復旧や大規模更新に行政が対応できる
  • 関東鉄道の運行ノウハウを活用できる
  • 運賃収入から施設維持費を回収できる

一方、自治体側に設備維持と更新の責任が長期間残る点には注意が必要です。

建設して終わりではなく、30年後の車両更新、橋梁修繕、信号設備更新まで見据えた基金や積立制度が必要になります。

結論

龍ケ崎市駅―成田空港LRTでは、次の構造が現実的です。

自治体側の広域施設機構が線路、橋梁、停留場、電力設備、信号設備、車両を保有し、第三セクターがそれらを借りて運行する。

第三セクターは、列車運行、利用者対応、日常点検、軽微な補修を担当します。

自治体側の施設機構は、大規模修繕、設備更新、災害復旧について最終責任を持ちます。ただし、実際の工事や整備は鉄道会社や専門業者へ委託します。

費用については、第三セクターが施設使用料を支払い、通常の設備維持費をできる限り運賃収入で賄います。需要が不足した場合や災害が発生した場合に限って、自治体等が支援します。

したがって、「運営は第三セクター、設備維持は自治体」という理解は大筋で正しいものの、より正確には次の表現になります。

設備の所有と最終責任は自治体側、実際の保守作業は第三セクターや専門業者、費用は施設使用料と公費で分担する。

この責任分担を契約で明確にできるかどうかが、LRTを建設すること以上に重要な課題になるのではないでしょうか。

※このプランはあくまでも、いち市民の空想です。

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