龍ケ崎市駅から稲敷、河内経由で成田国際空港へ――「入地駅分岐型LRT」の可能性を考える

稲敷再起動

龍ケ崎市駅から成田国際空港へ、乗り換えなしで移動できるLRTがあったら――。

本記事では、JR常磐線の龍ケ崎市駅・関東鉄道佐貫駅を起点に、既存の竜ヶ崎線を入地駅まで活用し、そこからたつのこやま、稲敷市角崎、長豊橋を経て成田空港へ向かう「入地駅分岐型LRT」の可能性を検討します。

なお、これは行政や鉄道会社が発表した正式計画ではありません。宮本春樹氏による「入地駅分岐型LRT構想」を、いち市民によるイメージでブログ記事にしたものです。
路線距離、利用者数、建設費、運行経費などは全て仮定した構想段階の試算です。

前提

成田空港就業者の2000人移住計画は、車通勤に頼ると大渋滞を引き起こします。そこで必要になるのが鉄道整備とライド&パークです。ここでは鉄道について深掘りしていきます。

また超高齢化社会で免許返納者が年々増加します。鉄道を整備し、各駅周辺をコンパクトシティ化することで、車がなくても生活できる社会を実現できるのではないかと考えます。

想定するルート

基本ルートは次のとおりです。

JR龍ケ崎市駅・関東鉄道佐貫駅
→ 入地駅
→ たつのこやま付近
→ 稲敷市角崎
→ 河内町長竿
→ 長豊橋・利根川横断
→ 成田市北部
→ 成田国際空港

総延長は約37kmを想定します。

佐貫―入地間の約2.2kmは、現在の関東鉄道竜ヶ崎線を改良して利用します。入地駅付近で既存線から分岐し、竜ヶ崎駅方面には向かわず、たつのこやま方面へ新線を建設する考え方です。

このルートの利点は、空港までの速達性です。竜ヶ崎駅を経由すると市中心部の利用者を取り込みやすくなる一方、線形が遠回りになります。入地分岐なら、龍ケ崎市駅からたつのこやま、稲敷、成田空港を比較的直線的に結べます。

竜ヶ崎駅方面はどうするのか

入地分岐を採用しても、竜ヶ崎駅方面を廃止する必要はありません。

運行系統を、例えば次の2つに分ける方法が考えられます。

  • 龍ケ崎市駅―入地―竜ヶ崎駅
  • 龍ケ崎市駅―入地―たつのこやま―成田空港

入地駅が二方向への分岐駅になります。

これなら、既存の竜ヶ崎線が担ってきた中心市街地への生活交通を維持しながら、新たに空港方面の広域路線を整備できます。

ただし、現在の竜ヶ崎線は非電化です。LRT車両を直通させるなら、電化、軌道改良、信号更新、ホーム改修などが必要です。架線を設置せず、蓄電池で既存区間を走行する方式も比較対象になります。

運行計画のイメージ

標準ケースでは、次のような運行を想定します。

項目想定
営業キロ約37km
停留場数約23~27か所
全線所要時間約75~85分
運行時間帯5時台~23時台
ピーク時約15分間隔
日中約20~30分間隔
平日の片道運行本数約96本
必要車両数約18編成(18両編成ではない)
車両定員1編成約150~160人

すべての列車を成田空港まで走らせる必要はありません。

需要の多い龍ケ崎市駅―たつのこやま間では本数を増やし、利用者が比較的少ないと予想される稲敷―成田空港間は本数を抑える区間運行が現実的です。しかし今後、空港就労者が多く居住するエリアが角崎近辺にできればそこから空港がメイン区間になることも想定しましょう。

空港アクセスとして使ってもらうには、所要時間だけでなく定時性も重要です。全列車を各駅停車にするのではなく、将来的には主要停留場だけに停車する快速運転も検討できます。

運賃はいくらになるか

運賃は距離制とし、次のような水準を仮定します。

  • 初乗り:約200円
  • 龍ケ崎市駅―たつのこやま:約300~400円
  • 龍ケ崎市駅―角崎:約500~600円
  • 龍ケ崎市駅―成田空港:約1,000~1,200円

通勤・通学定期、短距離利用、空港までの長距離利用を合計した平均乗車単価は、約670円と置きます。

現在の竜ヶ崎線は、佐貫―入地間2.2kmが普通運賃180円、佐貫―竜ヶ崎間4.5kmが250円です。この水準を参考にしながら、空港区間については距離に応じた運賃を設定することになります。

1日何人が利用すれば黒字になるのか

標準ケースの年間運行経費を約25億円と仮定します。

主な内訳は、運転士や保守要員の人件費、電力費、車両整備費、軌道・信号・停留場の保守費、保険・運行管理費、将来の車両・設備更新に備える積立金です。

平均乗車単価を670円、広告などのその他収入を運賃収入の5%とすると、損益分岐利用者数は次のようになります。

25億円÷1.05÷670円÷365日
=約9,740人/日

つまり、おおむね1日9,700~10,000人が、運営上の損益分岐です。

ただし、実際の計画では需要予測の誤差や物価上昇、災害、設備故障なども考えなければなりません。そのため、安定運営には少なくとも1日1万1,000~1万2,000人程度が望まれます。

標準ケースの年間収支

龍ケ崎市駅でJR常磐線と接続する効果を考慮し、標準ケースの利用者数を1日1万1,500人と仮定します。

項目年間試算
1日平均利用者数11,500人
年間利用者数約420万人
平均乗車単価670円
年間運賃収入約28.1億円
広告などのその他収入約1.4億円
年間営業収入約29.5億円
年間運行経費約25.0億円
年間営業損益約4.5億円の黒字

この数字だけを見ると、運営は十分成立するように見えます。

しかし、1日1万1,500人という利用者数は、現時点では需要調査に基づくものではありません。常磐線からの乗り継ぎ、沿線住民、通勤・通学、空港従業員、航空旅客などを合計した仮定です。

今後、本当に検証すべきなのは次の内訳です。

  • 龍ケ崎市内の生活利用
  • 稲敷市・河内町からの通勤・通学
  • 成田空港従業員の通勤
  • 常磐線沿線から成田空港への乗り継ぎ
  • 成田空港から茨城県南部への訪問需要
  • 自家用車や空港バスからの転換
  • パーク・アンド・ライド利用

特に空港従業員の通勤需要をどれだけ確保できるかが、安定した利用者数をつくる鍵になります。

3つの需要シナリオ

低位標準高位
1日利用者数7,000人11,500人16,000人
平均乗車単価620円670円700円
年間運賃収入約15.8億円約28.1億円約40.9億円
その他収入約0.8億円約1.4億円約2.0億円
年間運行経費約21.0億円約25.0億円約29.0億円
年間営業損益約4.4億円の赤字約4.5億円の黒字約13.9億円の黒字

低位ケースでは、自治体などによる年間4~5億円規模の運行支援が必要になります。

標準ケースなら、将来の更新費を積み立てながら運営黒字を確保できる可能性があります。高位ケースでは増便や設備改良にも対応できます。

建設費1,000億円は運賃で返せるのか

この構想では、総事業費を1,000億円と仮定しています。

結論からいえば、建設費1,000億円を運賃収入だけで回収するのは困難です。

標準ケースで年間4.5億円の営業黒字が出ても、単純計算で1,000億円を回収するには200年以上かかります。実際には金利や追加更新費も発生します。

したがって、建設と運営を明確に分ける必要があります。

建設

国、茨城県、千葉県、沿線自治体、成田国際空港株式会社、民間事業者などが負担し、軌道、橋梁、停留場、電力設備、当初車両を公共側が保有します。

運営

運営会社は施設を借り受け、運賃収入を中心に、日常運行と維持管理を行います。

宇都宮ライトラインでも、行政が施設や車両を整備・保有し、運営会社が運行を担う公設型上下分離方式が採用されています。

この方式なら、運営会社が1,000億円の建設債務を抱えずに済みます。

長豊橋が最大の難所

ルート上で最も難しいのは、長豊橋付近の利根川横断です。

既存橋をそのままLRTが通れるとは限りません。耐荷重、幅員、勾配、耐震性、河川管理上の条件など、詳細な調査が必要です。

考えられる方法は次の3つです。

  1. 既存橋を拡幅し、LRT軌道を併設する
  2. 道路橋の架け替えに合わせてLRT空間を確保する
  3. LRT専用橋を新設する

費用を抑えるには、国道408号の道路改良・長豊橋架け替えと一体的に整備する方法が有力です。LRT単独の鉄道橋として扱うより、道路事業と役割を分担できる可能性があります。

この路線は「空港アクセス専用線」ではない

この構想を成田空港へのアクセスだけで評価すると、需要が不安定になる恐れがあります。

重要なのは、複数の役割を持たせることです。

  • 龍ケ崎市内の都市交通
  • 竜ヶ崎線の再生
  • たつのこやま、アリーナ付近へのアクセス
  • 稲敷市・河内町の交通空白解消
  • 成田空港従業員の通勤
  • JR常磐線と成田空港の接続
  • 災害時の代替交通
  • 沿線開発と企業誘致

日常利用を土台にして、その上に空港需要を積み上げることが必要です。

まとめ

龍ケ崎市駅・佐貫駅を西側ターミナルとし、既存竜ヶ崎線を入地駅まで活用。入地駅からたつのこやま、稲敷市角崎、長豊橋を経て成田空港へ向かう。

営業キロは約37km。平均乗車単価を670円、年間運行経費を25億円とすると、損益分岐は1日約9,700人です。

標準ケースとして1日1万1,500人を確保できれば、年間運賃収入は約28億円、営業損益は約4.5億円の黒字になる可能性があります。

ただし、建設費1,000億円まで運賃で回収することはできません。実現には公設型上下分離を前提とし、建設費と運営収支を切り分ける必要があります。

この構想の次の段階は、単なる路線図づくりではありません。停留場ごとの利用者数、空港従業員の居住地、常磐線からの乗換需要、長豊橋の技術条件を調べることです。

「龍ケ崎から成田空港へ一本で行ける」という分かりやすさを、実際に持続可能な交通事業へ変えられるか。入地分岐型LRTは、その可能性を検討する価値のある構想です。

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