龍ケ崎市駅から入地、たつのこやま、稲敷市角崎、長豊橋を経て成田国際空港へ向かうLRT構想では、総事業費を概算1,000億円としています。
ただし、これは測量や地質調査、橋梁設計を行う前の構想段階の数字です。特に長豊橋の架け替え、成田空港内への乗り入れ方法、用地取得費によっては、大きく変動する可能性があります。
事業別の概算建設費
| 事業区分 | 概算事業費 |
|---|---|
| 佐貫―入地間の既存線改良 | 40億円 |
| 入地駅分岐・接続施設 | 30億円 |
| 入地―たつのこやま間 | 120億円 |
| たつのこやま―角崎間 | 180億円 |
| 角崎―長豊橋間 | 80億円 |
| 長豊橋・利根川横断 | 170億円 |
| 千葉県側―成田空港間 | 190億円 |
| 空港ターミナル接続施設 | 70億円 |
| 車両・車両基地 | 70億円 |
| 電力・信号・IC・運行管理設備 | 30億円 |
| 調査・設計・用地・予備費 | 20億円 |
| 合計 | 1,000億円 |
最大の費目は、千葉県側の新線と長豊橋・利根川横断です。
長豊橋については、LRT専用橋として単独整備するのではなく、国道408号の道路改良や橋梁更新と一体化できるかが重要です。道路事業として整備できる部分と、LRT事業として負担する部分を明確に分ければ、鉄道側の負担を抑えられる可能性があります。
負担主体別の基本ケース
最終的な費用負担を、次のように仮定します。
| 負担主体 | 負担額 | 構成比 |
| 国 | 500億円 | 50.0% |
| 茨城県 | 180億円 | 18.0% |
| 千葉県 | 135億円 | 13.5% |
| 龍ケ崎市 | 45億円 | 4.5% |
| 稲敷市 | 20億円 | 2.0% |
| 河内町 | 5億円 | 0.5% |
| 成田市 | 30億円 | 3.0% |
| 成田国際空港株式会社(NAA) | 65億円 | 6.5% |
| 関東鉄道・沿線企業等 | 20億円 | 2.0% |
| 合計 | 1,000億円 | 100% |
この案では、国と茨城・千葉両県で815億円、全体の81.5%を負担します。
沿線4市町の負担は合計100億円、全体の10%です。空港会社や関東鉄道、沿線企業などの民間・空港関係負担は合計85億円としています。
補助金から見る資金計画
事業化には、国の補助金や交付金、地方債、成田国際空港株式会社(NAA)などの負担を組み合わせる必要があります。
では、このLRT計画には、どのような補助制度を利用できる可能性があるのか。
2026年度時点の制度を基に、考えられる資金調達方法を整理します。
なお、ここで示す金額は構想段階の試算です。実際の補助対象、補助率、採択額は、国の予算、事業主体、認定計画、施設の区分などによって変わります。
1,000億円のうち50%補助を目指す
最初に注意したいのは、総事業費1,000億円全体に、一律で50%の補助金が交付されるわけではないという点です。
補助金は「補助対象経費」に対して交付されます。
用地取得費、予備費、補償費、管理施設、空港内工事など、制度によって対象外になる費用もあります。同じ設備に複数の補助金を重ねて受けることも、原則としてできません。
そこで本構想では、事業を次のように分割します。
- 既存竜ヶ崎線の再構築
- 入地駅の分岐・接続施設
- 龍ケ崎・稲敷地区のLRT新線
- 長豊橋・国道408号改良
- 千葉県側のLRT新線
- 成田空港ターミナル接続
- LRT車両・車両基地
- 電力・信号・IC設備
- 多言語案内・観光対応
- 調査・計画策定
それぞれに適した制度を当てはめることが、国費を確保するポイントです。
利用できそうな主な制度
| 制度 | 主な対象 | 支援水準の目安 |
|---|---|---|
| 地域公共交通再構築事業 | 既存線、駅、軌道、電力・信号設備 | 原則1/2 |
| 都市・地域交通戦略推進事業 | LRT、停留場、交通広場、乗換施設 | 条件により異なる |
| 公共交通×脱炭素化 | LRV、省エネ・蓄電・再エネ設備 | 1/2、1/3、1/4等 |
| 先進車両導入支援事業 | GX・DX対応車両 | 補助対象経費の1/2 |
| 道路関係の交付金・補助事業 | 長豊橋、国道408号、接続道路 | 道路部分は1/2程度等 |
| 鉄道軌道安全輸送設備等整備事業 | 軌道、踏切、信号、耐震・安全設備 | 事業条件による |
| 観光・インバウンド関係事業 | 多言語案内、Wi-Fi、IC決済 | 1/2または1/3等 |
| 地域公共交通調査等事業 | 需要調査、再構築協議、計画策定 | 1/2、上限あり |
既存竜ヶ崎線には「地域公共交通再構築事業」
最も有力なのが、社会資本整備総合交付金の「地域公共交通再構築事業」です。
この制度は、まちづくりや観光振興と連携し、持続可能な地域公共交通へ再構築するための施設整備を支援するものです。
本構想では、次の設備が対象候補になります。
- 佐貫―入地間の軌道改良
- 龍ケ崎市駅・佐貫駅の改良
- 入地駅の分岐設備
- ホームのバリアフリー化
- 電化または蓄電池対応設備
- 信号・通信設備
- 踏切保安設備
- ICカード対応
- 車両更新
- 車両基地改良
国の補助率は、原則として補助対象経費の2分の1です。
国土交通省の資料では、第三種鉄道事業者が自治体、または第三セクター鉄道の場合、地方負担分について地方債充当率100%、そのうち45%に交付税措置を講じる仕組みも示されています。
詳しくは国土交通省「地域公共交通再構築事業」で確認できます。
70億円で関東鉄道竜ヶ崎線を改良する場合
既存線と入地分岐の整備費を70億円と仮定し、全額が補助対象になれば、資金構成は次のようになります。
| 財源 | 金額 |
| 国費 | 35億円 |
| 地方負担 | 35億円 |
| 合計 | 70億円 |
地方負担35億円に地方債を利用し、その45%相当が交付税措置の対象になれば、自治体の将来的な実質負担を軽減できる可能性があります。
ただし、この制度は主として既存交通の再構築を支援するものです。入地―成田空港間の新線全体を、すべてこの制度で整備できるとは限りません。
新設LRTには「都市・地域交通戦略推進事業」
入地駅からたつのこやま、稲敷市角崎方面へ向かう新線では、「都市・地域交通戦略推進事業」が候補になります。
対象として考えられるのは次の施設です。
- LRT軌道
- 停留場
- 交通広場
- バスとの乗換施設
- パーク・アンド・ライド駐車場
- 公共交通優先信号
- 歩行者・自転車空間
- モビリティハブ
- 駅前広場の再整備
国土交通省は2026年度の都市局関係資料でも、都市軸となる公共交通や、複数の交通手段を結ぶモビリティハブへの支援を掲げています。
詳しくは国土交通省「2026年度都市局関係予算資料」で確認できます。
この制度を利用するには、LRTを単なる空港アクセス線ではなく、都市・地域づくりの中心に位置付けることが重要です。
例えば、次の政策と一体化させます。
- 龍ケ崎市駅周辺の再整備
- たつのこやま周辺の都市機能強化
- 稲敷市角崎の交通結節点整備
- 沿線住宅・商業開発
- バス路線の再編
- 公共施設へのアクセス改善
- 自動車依存から公共交通への転換
各自治体の地域公共交通計画や立地適正化計画に、LRTを明確に位置付ける必要があります。
車両・電力設備には脱炭素補助金
LRTは電気で走るため、脱炭素関係の補助制度とも相性があります。
環境省と国土交通省の連携事業である「地域の公共交通×脱炭素化移行促進事業」では、LRT車両や省エネルギー設備等の導入が支援対象として示されています。
対象候補は次のとおりです。
- 省エネルギー型LRV
- 回生ブレーキ対応車両
- 蓄電池搭載車両
- 回生電力貯蔵装置
- 高効率変電設備
- 急速充電設備
- 太陽光発電
- 再生可能エネルギー設備
- エネルギー管理システム
制度上の補助率は、設備によって2分の1、3分の1、4分の1などです。
詳しくは環境省「地域の公共交通×脱炭素化移行促進事業」で確認できます。
100億円の車両・設備を導入する場合
車両、車両基地、電力設備などに100億円かかると仮定します。
そのうち60億円が補助対象となり、補助率2分の1が適用されれば、国費は30億円です。
ただし、軌道、橋梁、用地取得などを含めた建設費全体に適用されるわけではありません。
先進車両導入支援事業も候補
地域公共交通の再構築と一体でGX・DX対応車両を導入する場合、「先進車両導入支援事業」も候補になります。
国土交通省の制度資料では、先進的な車両の導入について、補助対象経費の2分の1とされています。
例えば、LRT車両18編成の総額を108億円とし、そのうち80億円が補助対象になれば、国費は40億円です。
ただし、脱炭素補助金と同じ車両費に重複して補助を受けることはできません。
次のように費目を分ける方法を検討します。
- 車両本体:先進車両導入支援
- 蓄電池・回生設備:脱炭素補助
- 車両基地:都市交通・再構築事業
- 信号・通信:安全輸送設備整備
- IC・案内設備:観光・利便増進事業
長豊橋は道路事業として整備する

本構想の中で、補助制度の使い方が最も重要になるのが長豊橋です。
想定しているのは、次の2層構造です。
上層:国道408号
下層:LRT複線
橋脚、基礎、耐震設備などを道路とLRTで共有します。
長豊橋を「LRT専用橋」として建設すると、鉄道側だけで大きな建設費を負担することになります。
一方、国道408号の道路改築・橋梁更新と一体化すれば、道路関係の社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金、道路改築事業などを活用できる可能性があります。
2026年度の道路関係制度については、国土交通省「道路の補助制度」で公表されています。
長豊橋170億円の試算
| 区分 | 事業費 |
| 道路橋として必要な部分 | 120億円 |
| LRT追加部分 | 35億円 |
| 共用・調整部分 | 15億円 |
| 合計 | 170億円 |
道路部分120億円に国費率50%を適用できれば、国費は60億円です。
LRT追加部分35億円に、別の制度で3分の1から2分の1程度の支援を受けられれば、国費は約12~18億円になります。
共用部分の扱いを含めると、長豊橋全体では70~80億円程度の国費を目標にできる可能性があります。
ただし、下層のLRT部分まで道路事業の対象になるとは限りません。橋脚や基礎など、道路とLRTで共有する部分の費用配分が重要になります。
安全設備には地域鉄道向け補助金
既存竜ヶ崎線の安全性向上には、「鉄道軌道安全輸送設備等整備事業」などが候補になります。
対象になり得るのは次の設備です。
- レール・枕木
- 分岐器
- 信号保安設備
- 踏切保安設備
- 落石・浸水対策
- 耐震補強
- 車両の安全設備
- 運行管理設備
鉄道事業再構築実施計画の認定を受けた事業には、重点配分、補助率のかさ上げ、固定資産税等の特例措置があります。
詳しくは国土交通省「地域鉄道に対する国の支援制度」で確認できます。
この制度は、成田空港までの新線建設よりも、既存の佐貫―入地―竜ヶ崎間の安全設備更新に適しています。
成田空港接続には観光・インバウンド支援
成田空港へ接続する路線であるため、外国人旅行者の利用環境整備も補助対象になる可能性があります。
対象候補は次のとおりです。
- 多言語案内
- 駅ナンバリング
- 全国交通系ICカード対応
- クレジットカード・モバイル決済
- 無料Wi-Fi
- 多言語運行情報
- 手荷物スペース
- バリアフリー案内
- 空港ターミナル内の乗換案内
観光振興事業の一部では、複数の利便設備をすべて新規導入する場合に2分の1、それ以外の場合に3分の1とする補助メニューがあります。
詳しくは国土交通省「観光振興事業」で確認できます。
ただし、この制度で橋梁や線路本体を整備することはできません。案内、決済、通信などに対象が限られます。
需要調査にも補助金を使える
建設事業の前に、需要予測やルート調査を行う必要があります。
地域公共交通調査等事業では、ローカル鉄道の再構築に向けた協議や調査について、補助率2分の1、上限1,000万円の制度が示されています。
詳しくは国土交通省「地域公共交通調査等事業」で確認できます。
本構想で必要になる調査は次のとおりです。
- 停留場別の利用者予測
- 成田空港従業員の通勤需要
- JR常磐線からの乗換需要
- 自動車・空港バスからの転換需要
- 入地分岐の線形
- 既存竜ヶ崎線の改良方法
- 長豊橋の構造・地質
- 空港内への乗り入れ方法
- 第三セクターの経営計画
- 30年間の財政負担
実際には総合的な調査に1億円以上かかる可能性があるため、補助金だけでなく、茨城県、千葉県、沿線自治体、関東鉄道、NAAの共同負担も必要です。
1,000億円に対して国費はいくら見込めるか
各制度を重複させずに当てはめると、国費の概算は次のようになります。
| 事業区分 | 事業費 | 国費の目安 |
| 既存竜ヶ崎線・入地分岐 | 70億円 | 25~35億円 |
| 入地―たつのこやま | 120億円 | 40~60億円 |
| たつのこやま―角崎 | 180億円 | 60~90億円 |
| 角崎―長豊橋 | 80億円 | 25~40億円 |
| 長豊橋・利根川横断 | 170億円 | 70~80億円 |
| 千葉県側新線 | 190億円 | 60~95億円 |
| 空港ターミナル接続 | 70億円 | 20~35億円 |
| 車両・基地・電力・信号 | 100億円 | 35~50億円 |
| 調査・用地・予備費等 | 20億円 | 0~5億円 |
| 合計 | 1,000億円 | 335~490億円 |
現段階では、国費400億円程度を堅めの基本ケースとするのが適切です。
国費500億円は実現不可能とはいえませんが、すべての主要事業で有利な採択を受けた場合の目標値と考えるべきです。
基本となる資金計画
国費を400億円とする場合、残り600億円の負担案は次のようになります。
| 負担主体 | 負担額 | 構成比 |
| 国 | 400億円 | 40% |
| 茨城県 | 210億円 | 21% |
| 千葉県 | 160億円 | 16% |
| 龍ケ崎市 | 55億円 | 5.5% |
| 稲敷市 | 25億円 | 2.5% |
| 河内町 | 5億円 | 0.5% |
| 成田市 | 35億円 | 3.5% |
| NAA | 85億円 | 8.5% |
| 関東鉄道・沿線企業等 | 25億円 | 2.5% |
| 合計 | 1,000億円 | 100% |
国費500億円を確保できた場合は、県・市町の負担を100億円程度圧縮できます。
ただし、NAAの負担は制度上の補助金ではありません。空港ターミナル接続、空港従業員輸送、空港敷地内施設などの受益に応じて、出資や整備費負担を求めるものです。
補助金以外に使える財源
地方債
補助金を差し引いた自治体負担について、地方債を利用できます。
地域公共交通再構築事業では、一定の条件を満たす場合、地方債充当率100%、45%の交付税措置が示されています。
地方債は補助金ではなく借入金なので返済が必要ですが、負担を建設時に集中させず、将来に分散できます。
地方債による資金調達
自治体負担の全額を建設期間中に一般財源から支払うのは困難です。そのため、県や市町の負担額の一部について地方債を利用すると仮定します。
| 地方債の発行主体 | 想定発行額 |
| 茨城県 | 60億円 |
| 千葉県 | 45億円 |
| 龍ケ崎市 | 15億円 |
| 稲敷市 | 7億円 |
| 河内町 | 1億円 |
| 成田市 | 7億円 |
| 公共施設保有主体等 | 15億円 |
| 合計 | 150億円 |
地方債150億円は、国費や自治体負担に追加される財源ではありません。自治体等が負担する金額を、将来に分割して支払うための借入金です。
仮に150億円を金利年1.5%、30年元金均等で返済すると、年間返済額は当初約7.2億円、30年間の平均で約6.2億円になります。
地方交付税措置のある地方債を利用できれば、自治体の実質負担は軽くなります。一方、交付税措置がなければ、元金と利息を各自治体がそのまま負担します。
財政投融資
鉄道・運輸機構による地域公共交通、交通DX・GX関係の出融資制度も候補です。
こちらも原則として返済が必要な資金です。第三セクターや施設保有機構の資金調達を補う手段になります。
沿線開発
龍ケ崎市駅、たつのこやま、角崎などで沿線開発を行い、その利益をLRT整備へ還元する方法もあります。
- 駅前用地の売却・賃貸
- 土地区画整理
- 商業施設・住宅開発
- 駐車場収入
- 開発事業者負担金
- ネーミングライツ
- 沿線企業からの出資
補助金だけに依存せず、LRTによって生まれる沿線価値を事業費に還元する仕組みが必要です。
補助金を受けるために必要な準備
補助制度を利用するには、まず関係者による合意形成が必要です。
参加が必要になるのは、少なくとも次の機関です。
- 茨城県
- 千葉県
- 龍ケ崎市
- 稲敷市
- 河内町
- 成田市
- 関東鉄道
- 成田国際空港株式会社
- 国土交通省関東運輸局
- 道路・河川管理者
- JR東日本
- 地域住民・沿線企業
その上で、次の計画を整備します。
- 広域的な地域公共交通計画
- 鉄道事業再構築実施計画
- 軌道運送高度化実施計画
- 都市・地域総合交通戦略
- 立地適正化計画
- 長豊橋・国道408号改良計画
- 脱炭素交通計画
- 成田空港アクセス計画
補助金は、LRTのアイデアだけで交付されるものではありませんし、また利用者数、収支、CO2削減効果、まちづくり効果、道路渋滞の改善、空港アクセスの必要性などを数字で説明する必要があります。
まとめ
龍ケ崎―成田空港LRTで中心となる支援制度は、次の4本柱です。
- 既存竜ヶ崎線には「地域公共交通再構築事業」
- 新設LRTと乗換拠点には「都市・地域交通戦略推進事業」
- 車両・電力設備には「公共交通×脱炭素化」
- 長豊橋には道路関係の交付金・補助事業
総事業費1,000億円に対し、想定できる国費は335~490億円程度。
資金計画では、国費400億円を堅めの基本ケース、500億円を政策的な目標とするのが現実的でしょう。
そして、この計画の成否を左右するのは、補助率だけではありません。
既存鉄道の再生、都市交通、道路改良、脱炭素、観光、空港アクセスを、それぞれ独立した事業として整理し、一つの広域交通構想にまとめられるか。
これが、龍ケ崎―成田空港LRTの資金計画における最大のポイントではないでしょうか。
※この構想はあくまでも、いち市民の空想です。




